芳賀の家は最近リフォームしたらしくて、新しい家のにおいがしてる。
ちょっと鼻の奥がツンとした。
家の人たちは丁度出払ってたみたいで、
静かで広々としたリビングの椅子に1人座らされる。
普段はきっとこの部屋、スゲー賑やかなんだろうな。
なんとなく、そんな想像したりして。
芳賀「……はあ。藍川はこういうの不向きなんだから」
裕太「だ、だって……見てらんなかったんだもん」
芳賀「それでお前がもっとひどい怪我したら、
おれがお前の兄ちゃんとか廣瀬に恨まれるっつーの。
……ほら、肩出せ」
戸棚から救急箱を取り出して来た芳賀に制服剥かれる。
熱もった肩が空気に晒されると、そこがじんじん脈打ってんのを自覚した。
芳賀はオレの肩をあちこち押したり、腕を持ってぐるぐる回したりしてる。
芳賀「いたいか?」
裕太「ううん、そんなでもない。だんだん治まって来たよ」
芳賀「……ま、見たとこ骨は大丈夫だな。擦り切れてるから消毒するぞ」
芳賀はそう言いながら石鹸で手を洗ってる。
傷口に消毒液噴射されたら、ビリッと滲みた。
芳賀「ま、しばらくそうしてろよ」
裕太「う、うん……。芳賀、ありがと」
芳賀の大きな手がグシャグシャ頭撫でてくる。
ふと、なぜか父さんの手を思い出した。大きくて、温かい手。
裕太「……あのさ、芳賀」
芳賀「ん?」
裕太「何でお前ら……ケンカしてたの?」
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