ああ……。なんだかすごくいい匂いがする。
この匂い、なんだろう? 懐かしくて、気持ちいい。
周平「……裕太。そろそろ起きろよ、裕太」
裕太「え……兄ちゃん……?」
匂いどころか、懐かしい声までする。
兄ちゃんの声。優しくて、あったかい。
……なんだ。まだオレ、夢見てんのか。リアルな夢だなあ……。
だって兄ちゃんがオレの部屋にいるわけないもんな。
親父と母さんは福岡だし、兄ちゃんは札幌。
オレは1人で東京にいて……。
うーん。なんか寂しくなって来た。何で兄ちゃんの夢なんか見てるんだろう……。
周平「ふっ。……裕太、そんなにしがみついたら、兄ちゃん起きられないだろ?」
裕太「でも……もう少し……」
だってどうせ起きたら消えちゃうんだし。
それなら、夢の中だけでも、兄ちゃん感じてたい。
オレは兄ちゃんの胸に深く顔を埋める。
昔からこうして兄ちゃんに抱きついてると、すごく安心した。
裕太「兄ちゃん……」
周平「……仕方ないなあ。
ホントにお前は、いつまで経っても甘えん坊なんだから」
髪を撫でてくれる手の平。
うわーなんだかこの夢、すごくリアルだよ。
この分だと、目ェ開けても、兄ちゃんいるような気がするなあ。
…………。
周平「おはよう。裕太」
裕太「……あれ……?」
周平「ん? どうした? まだ寝ぼけてるのか?」
裕太「……兄ちゃんだ」
……そうだ。そうだった。
兄ちゃんは、昨日オレの部屋にいきなり来てたんだ。
それで、これからしばらく一緒に暮らすことになって……。
夢なんかじゃ、なかったんだ。
……なんかちょっと、安心する。
やっぱり、兄ちゃんがいるって……いいなあ。
周平「ほら、もう昼近くになっちまったんだから、
急いで洗濯するぞ」
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