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PIL/SLASH第二弾!コイビト遊戯

スペシャル

::: 第2位 滝沢蓮編  :::
■ 恋のヤマイ -Takizawa × Yuta− / 文・画:丸木文華 ■



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  滝沢の突然の申し出に、驚いた。この歳になれば、さすがにいつも自分でやっている。一応コイビトとは言え、同級生に塗らせるなんて変だ。
「い、いいよ、自分で……」
「この部屋狭いくせに寒いから、お前の熱い身体抱きながら塗りたいんだよ」
「だ、抱く!?」
「おい勘違いすんな。抱っこだ、抱っこ」
  滝沢は有無を言わせず、オレの腕を引いた。布団を蹴って剥き出しになった脚を抱え込む。そのまま布団の上にどっかりとあぐらをかいて、その足の上にオレを乗せて抱きかかえた。いきなりの体勢の変化にくらくら目眩を起こしているオレを無視して、むしりとるようにパジャマのボタンを外していく。オレは慌ててその手を掴んだ。
「お、おい、そんな全開にしなくたっていいんだ。上の方だけで」
「分かってるって。任せとけ」
  滝沢は口だけで適当なことを言いながら、オレの手を振り払って、結局全てのボタンを外してしまった。妙な展開にどぎまぎしながらも、気力のないオレはぐったりと滝沢の胸に頭を預けて、されるがままになってしまう。
  滝沢の胸元から、いつもの香水の匂いが漂う。オレは無意識に目を閉じて、火照った頬を冷えたシャツに擦り付けた。滝沢の手が、一瞬止まる。
「……さすがに熱いな。お前」
「滝沢……こんなにしてたら風邪がうつる……」
「予防注射打ってあるから平気。お前もやれ。大体しょっちゅう熱出し過ぎなんだよ」
  悪態をつきながら、滝沢はオレの剥き出しになった肌にジェルを塗り付けていく。ひんやりとした感触が気持ちいい。ミントの香りが鼻から喉に抜けて、少しずつ楽になっていく。
  オレはうっとりと呼吸をした。
「……いいのか? 藍川」
「うん……胸の辺り、すっきりする」
「へえ。ホントに効くんだな」
  滝沢は更にジェルを指ですくって、広範囲に塗り広げていく。鎖骨の周辺の胸元だけでいいのに、乳首の方まで指で撫でられて、思わず腰が浮いた。熱のせいでぼうっとしてたけど、考えてみれば何だか変な体勢だ。何で胸に薬乗るだけなのに、足の上に抱きかかえられなきゃいけないんだ。

「お、おい……もういいよ。そんなに、塗らなくても……」
「気持ちいいんだろ? ……黙ってじっとしてろよ」
「た、きざわ……」
  がっちりと押さえつけられたまま、明らかに別の意図を持ち始めた指に胸を撫で回される。ぬるぬるとした指の腹で胸の先端を擦られて、たちまちそこは尖っていく。赤く充血した乳首を親指と人差し指でこりこりと摘まれて、下腹部に熱い快感が溜まりだす。

「う、うぅ……あ」
「ん……? どうしたよ……」
  声をかみ殺すオレの頬に音を立ててキスをしてくる。気持ちいいか、と耳の中を舐めながら囁かれて、背筋に痺れが走る。
  滝沢の指はいつまで経ってもそこから離れない。優しく柔らかく撫でながら、ふいに強い力できゅっと引っ張ったりする。手の平全体で撫でられると、勃起した乳首が指に引っかかって、その状態を教えられているようで、頬が燃えた。そして、ひっきりなしに息を詰めて、下半身に電流のように走る感覚に耐える。
  頬にかかる滝沢の息が、荒い。尻の下に感じるそこは、すでにくっきりと形を成して、押し返すような弾力で存在を主張している。
「はぁ……スゲエな……ジェルにまみれてエロイ眺め」
「ん……ッや、だ……そこ、やめろ、よ……おい、滝沢ッ……」
「どうした……? もっと別のところにも欲しいのか?」
「っ! ち、ちが……よせッ」

  強引にパジャマのパンツを下着ごとずり下ろされる。 直に空気が肌に触れてぞわっと総毛立った。汗に濡れた太腿の間で、半分勃ち上がったオレのものが情けなく揺れる。
  迷いもなく尻に滑っていた滝沢のぬめる指は、その谷間に濡れた音を立てて潜り込んだ。
「ひ、……ぅ……」
「熱いな……中も……」
  ぐりぐりと腸壁を撫で回す長い指。オレの体の隅々まで知り尽くしている滝沢は、すぐに弱い場所を探り当てる。そこを押された途端、腰がぶるりと震えて、目の前が白くなった。高い声を上げそうになって、奥歯を噛んでぐっと堪える。
「うく、ぁ……ぁ……だ、め……ここ、壁、薄……」
「じゃあ声我慢しろよ……お前のそういう表情、たまんねえ」
「っ!! く、滝沢ッ……お、お前な……っ」
  必死でその胸板を突っぱねても、まるで岩のように頑として動かない。逃れようと力を込めると、ますます尻の中の指を感じて、快感でなし崩しになる。叱りつけられるように乳首をつねられて、声にならない悲鳴を上げた。
  前立腺を執拗に圧迫され続けて、性器の先端からとろとろと白いものが溢れ出す。中を掻き回す太い指。耳に吹き込まれる掠れた吐息。胸を愛撫する指先。狭い部屋に響く、ジェルのくちゅくちゅという濡れた音が頭を沸騰させる。
「はあ……っ、は、ぁあっ、あ、やだ、も……あぁあ」
「触ってねえのに、乳首とケツだけでビンビンだな……やらしいヤツ」
「う、あぁっ……お、オレ、も、これじゃ……このままっ……」
  容赦なく二本目の指がぐちゅりと中に潜り込む。倍になった圧迫感に全身が痙攣して、涙がこぼれる。目の前がぐるぐると回る。全身が火照って、肌がぬめる汗できらきらと光っている。睾丸が滝沢の手の平で押されて痛みと快感がごちゃ混ぜになる。
「あっ、ひあ、ぁあっっ……」
「ん……すげえ感じてんな、藍川……ほら、このままいってみろよ……ほら、ほらっ!」
「ひ……ッッ」
  ぐりぐりと粘膜のしこりを擦り上げられる。同時に、乳首を乱暴に摘まれて、オレは────
「は……あっ……あ…………」
  性器の奥から熱い快感の波が押し寄せて、弾けた。胸元からビリビリと伝わって来る刺激が、腰を揺らす。どろりとした白い粘液が臍のくぼみに溜まって、生臭いにおいを漂わせる。
  滝沢はまだ指を尻の中にいれて、ゆるゆると粘膜を撫でている。性器の先端からはまだ精液が糸を引きながら滴っている。
「はぁ……ああ、藍川……可愛いな……」
「……も……勘弁、し……」
「……もっと汗流せば、熱も下がるんじゃねえの?」
「っ……!! な、な、……」
  間近でにやりと細められた翠色の瞳が、悪魔のようにきらめいた。布団に身体を横たえられ、上からのしかかって来る黒い影に、絶望した。
  ────そこから先は、記憶が混濁して、曖昧だ。いつしかオレは……意識を手放していた。
 

                                                     ***  

   肌に触れる柔らかなシーツの感触。どこまでも沈み込んでいきそうな海のような感覚。
  熱を出し過ぎて、身体がおかしくなったんだろうか? そう思うほど、いつもの寝床と違っていた。
  ────それもそのはず。
「……お。起きたか?」
「……たき、ざわ……?」
  重い瞼を開いて、最初に視界に飛び込んで来たのは滝沢の裸の胸だった。 次に認識したのは、ここが自宅のアパートではなく、滝沢のマンションだということ。……オレは、上半身裸の滝沢にバスローブ姿で抱き締められて、滝沢の部屋のベッドで寝ていたんだ。
  一瞬夢かと錯覚するほどの展開にオレが硬直していると、滝沢は上機嫌な表情で微笑んだ。
「なんかお前妙にぐったりしちまったからさ。オレのかかりつけの医者で点滴打ってもらって、オレんちにお引っ越し。こっちの方がずっと快適だろ?」
「か……勝手に連れて来たのかよ!?」
「だってあんな犬小屋みたいな部屋じゃお前、治るもんも治らねーよ」
「い、いぬっ……」
  あまりの暴言に絶句する。犬小屋だって!?
  そりゃこんな無駄にだだっ広いところに住んでたらうちは犬小屋だか兎小屋だかにしか見えないだろうけど、あそこはオレの汗と涙が染み付いた唯一無二の城なんだぞ! と主張しようとした唇が、呆気なく滝沢の唇に塞がれる。
「うっ……んぅう、む〜〜っ!」
「ン……、なんだよ、キスくらいいいだろ。しばらく本番はやんねーよ」
「あ……あのなあ……! 当たり前だろ!? 大体お前、見舞いに来たと思ったら病人相手にあんなっ……」
「お前がエロイ顔で胸にジェル塗ってとか言うから悪いんだろ」
「言ってねえ!!」
「まあ、過ぎたことはもういいじゃん。身体に障るぜ。汗流して点滴打ったし、調子いいだろ?」
  飄々とした物言いに開いた口が塞がらない。けれど滝沢の言う通り、身体はずっと楽になっている。熱っぽさはほとんどないし、少し喉の痛みが残るくらいだ。結果的にはよかった、のか……?
  納得しかけて、ハッと我に返る。
「っていうか! 汗流してよくなるわけねえだろ! あ、あんな負担のかかること……っ」
「最後の方はお前がもっと、ってねだったんだぜ……薄い壁の部屋でよお」
「!!!?」
  意識がなかったので記憶にないけれど……まさかオレは、あの部屋でヤバイ声を出していたんだろうか。
  さあっと血の気が引いていくのが分かる。あのアパート、隣の部屋でテレビ見てる音も聞こえるくらいなのに……。
「か……帰れねえ……」
「いいじゃん、ずっとここにいれば」
「そ、それは、だ、だめだって!」
「これからは、オレがつきっきりで面倒みてやるからよ。メシの世話も身体の世話も……何もかも、な」
  満足げな顔で再び唇を奪われて……オレはなんだか、疲れ切ってどーでもよくなってしまった。
  まあ、どっちにしろ兄ちゃんは来週まで帰って来ないし。滝沢に甘えてここにいるのも、そう悪くないかもしれない……しばらくやんないって言ってるし。信用できる確率は5%くらいだけど。
  オレは滝沢の傍若無人な行動に慣れつつある自分に辟易しながらも、目の前で幸せそうに笑うコイビトの顔が何よりも大事であることを自覚していた。
  このまま、ずっとコイツに振り回され続けるんだろーか。
  それも悪くないと思い始めたこと自体、風邪よりもずっとタチの悪い、永遠に治らないビョーキなのかもしれなかった。

- END -