アヅマ「がハっ……、ぉえ、……ゲホゲホ……」
沼の藻でも飲んだのか、とにかく止まらない。
半身を折って必死で咽続けていると、涙で滲んだ視界の上の方から、金髪が垂れ下がる。
アヅマ「はー、はー……」
僅かに顔だけ持ち上げる。
両膝をだらしなく開いて水際に屈んでいるミツギが、目の前から俺を覗いていた。
楽しそうにしなった目元と、今にも笑い出しそうに歪められた口の端。
ミツギ「湯加減はどうだった?」
アヅマ「ハ……、はあ……。ごほ、……てめえマジ……、ケホッ」
胸元の布地を握り締めて、必死で呼吸を整える。
ミツギ野郎の声は耳に入ってくるけど、思うように呼吸できないもどかしさが、理解力を鈍らせている。
ミツギ「水浴びしたそうだったから背中押してやったんだよ。どうだった? バカンスできてっか?」
アヅマ「ごほ……、はあ……」
マツダ「俺はマツダ。普通にサラリーマンをやってる。27歳だ」
マツダ「ツアーに申し込んだ理由は、釣り。この島じゃ大物が釣れるって噂を聞いてさ」
スポーティーな格好のその人は少し大柄で、服の裾から覗いている手足が筋肉に覆われているのが遠目からでもよく分かった。
声もでけえし、笑顔は眩しいし、全体的に活力に満ちてる。
つうか、27歳か……、申し訳ないけどもう少し上だと思ってた。何となく。
マツダ「……お前。確かアヅマだったか」
どことなく不穏な声がしたと思ったら、目を細めたマツダさんとバッチリ視線が合ってしまった。
アヅマ「はい?」
マツダ「今、もっと年くってると思ってたって顔したな」
アヅマ「……!」
ギクッとする。
何でバレたんだ。
アヅマ「……ちょっと待てよ、おい」
アヅマ「ぶつかっといてシカトはねえだろ」
ミツギ「……」
そいつは、白っぽい金髪をなびかせながら億劫そうに俺を見上げた。
そうしてじっと俺の顔を見つめたまま、緩い瞬きを数回だけ、した。
まるで何かを確認でもしてるみたいに。
謝ってくれんのかなって期待したけど。
ミツギ「……」
そいつは結局何も言わずに、口元を歪める。
何だよ。謝らねえのか。
ミツギ「そっちも謝ってないだろうが。だったらお互い様だな」
アヅマ「お、お互い様!?」
ようやく口を開いたかと思ったら、謝罪どころかお互い様かよ。
俺の目は真ん丸になる。
マツダ「首舐められて、服の上からちょっと触っただけで、こんなになる奴初めて見たけど」
アヅマ「…………、……」
折り重なった体勢のまま、マツダは自分の根本に手を添えた。
線を引くようにゆっくりと、俺の根本から先端にまで這わせる。
アヅマ「あー…………っ……」
自分のちんぽが一際激しく脈打つのを、自分で感じてる。
マツダ「兜合わせ。お前が散々濡らしてくれたからローションなくても全然余裕だな」
マツダは充血した目で俺の顔を見ながら裏側同士を合わせるようにし、静かに密着させる。
アヅマ「~~~……ッッ」
熱くて、とろけ合うような感覚に、大きく背筋が仰け反る。
男の性器に触れられたという背徳感がえも言われぬ快感となって
腿からつむじを走り抜けていく。
スーツケースを引いた小柄な少年が公道から港へ下りる階段に手こずっているのが見えた。
アヅマ「あいつもツアー客だよな……?」
普段は人助けなんて好んでやらないけど、旅行を前に気が大きくなっていることもあって、手伝いに出向くことに躊躇はなかった。
アヅマ「重いの?」
タカラ「…………」
アヅマ「手伝おうか」
あ、何も言わずに手を貸した方が良かったかも。
男がそんなこと言われて、素直に『じゃあお願いします』なんて――――
タカラ「……うん。よろしく」
言う奴いたわ。良かった。
スーツケースを引いた小柄な少年が公道から港へ下りる階段に手こずっているのが見えた。
アヅマ「あいつもツアー客だよな……?」
普段は人助けなんて好んでやらないけど、旅行を前に気が大きくなっていることもあって、手伝いに出向くことに躊躇はなかった。
アヅマ「重いの?」
タカラ「…………」
アヅマ「手伝おうか」
あ、何も言わずに手を貸した方が良かったかも。
男がそんなこと言われて、素直に『じゃあお願いします』なんて――――
タカラ「……うん。よろしく」
言う奴いたわ。良かった。
アヅマ「早く……動かせって……」
ミツギ「……指図すんな」
黙れとでも言わんばかりに、突然上下に擦られて、全身が硬直する。
アヅマ「――――! ぁ、ぁああ、あァ!」
驚いたのと、ずっと欲しかった刺激をいきなり与えられたせいで、声の加減がきかなかった。
ミツギ「声でか……」
アヅマ「ッし、仕方な……あ、ぁあ……」
ミツギは、同じ動作を繰り返す自分の手を見てた。 ……違う。 擦られる度に、中から染み出してくるものを真剣に見つめてた。
アヅマ「ぁ、……はっ……、あ」
こんなに感じてんのを、見られてる。 ミツギに。 こんな姿、今、世界で一番見られたくねえはずの奴に。
アヅマ「あ、あ、や……あぁ、……ッ……、――っく」
マツダの分厚い体を、背後から支える。 コケかけて崩れていた体の軸が、元に戻るまで。 腕や胸板とか、くっついてる部分に、マツダの体温が伝わってくる。 パーカー越しだっつうのに、俺よりだいぶ暖かかった。
アヅマ「…………」
なんだ。なんで今ドキッとした。 マツダは男だろうが。 これが可愛い女の子だったなら、仕方あるまいってなるけど。
マツダ「…………」
何故かその場に沈黙が落ちた。 俺の妙な動揺が伝わってしまったのかと、内心くっそ焦る。
アヅマ「え、えーと……そろそろ大丈夫? 離しても」
マツダ「お、おう」
ミツギ「……」
マツダ「おーい、どうだ? 全員写ってるか?」
シマダ「うん、大丈夫。ばっちり」
シマダ「……よし。タイマーも設定完了。5秒後にシャッターだからね」
言いながら、シマダさんが列に加わる。
マツダ「3」
タカラ「2」
アヅマ「1」
自分ではかっこいいと思ってるキメ顔を作る。 きっと誰もが虜になってしまうようなかっこいい俺で写れたに違いねえ。
タカラ「ふ……、はぁ……、ん、ん……」
アヅマ「――――……ッ、 ばっ……、ぁ……あ」
な。
なんだこれ。
何されてんだ俺は。キスか?
これが?
アヅマ「た……たか、……」
タカラ「おいしい……」
アヅマ「は……?」
マツダ「やっぱりアヅマ、超美味しい」
アヅマ「……」
なんだよ、そのAVみたいな感想は。